2010/02/10

Q.「技術者が中央に集中してしまう流れは止められないのか」

In responce to:
田舎Ruby親方:プログラマの東京集中は止まらない
東京に集中とか地方でプログラマとか - HsbtDiary

@hsbtさんに名指しされたので、ちょっと長文書いてみましょうか。



問題提起は「技術者が中央に集中してしまう流れは止められないのか」ということ。
僕の結論は「今は止まらないし、手を打たないといつまでも止められない」になる。

技術者が中央に集中する地方の要因は三つ。
  • 人件費が低い
  • 業務に新規性が無い
  • 一つの技術を追求することが難しい
その要因が発生する原因は二つ。
  • 案件数が少ない
  • 案件規模が小さい


(1)案件数が少ない
2005年度調査では、東京都の人口は1257万、北海道は562万。実に2.5倍の人口差があるわけで、もちろんその分企業の数にも差が出てくる。結果、東京での案件数に比べ、北海道の案件数は非常に少ない。
そもそも企業規模が小さく為、ちょっとPCに詳しい人がパッケージソフトウェアをマクロでカスタマイズしたようなシステムで事業が事足りていることが多く、外部に発注するようなシステムを必要としない。外部発注が必要な規模のシステムだと官公庁・文教(大学等)・金融・病院・大規模流通会社くらいだろうが、この辺は東京本社の大手ベンダががっつり抑えているし、発注側も実績の無いような中小企業になんて出さない。結果実績のある大手ベンダが抑え、その下に中小企業が孫請けひ孫請けで張り付く、という所謂IT土方の流れが構成されて切り崩せない。これじゃ地元にお金が落ちないよね、と地方自治体は地元企業指定で案件入札かけるが、そうは言っても大規模システムを受注しきれるような体力のある会社は地方にあるはずも無く「名前だけ地元企業→大手ベンダが子請け→更に中小企業が孫請け」というラインが出来る。
この階層請負システムのせいで、更に昨今の不況が加わって、案件単価はどんどん下がり、その分中小企業の人件費がどんどん叩かれるし、案件を取るだけの体力の無い会社はバンバン潰れていく。そうすると雇用枠自体が少なくなり、結果地方から中央への人材の流出が発生するわけだ。正直なところ、東京と地方では、生活コストにはまだ差があるにせよ、物価というレベルではほとんど大差無い。しかし単価で言えば3~4倍の差があるのが実情。それはIT土方システムの中で中抜きされてる分に加え、単価競争というバッドスパイラルが大きな要因になっている。

(2)案件規模が小さい
地方は人口が少ない分企業規模も小さい。そうすると案件規模も小さいものしか出てこない。東京では億単位の案件を経験する事も良くあるだろうけれど、地方でいえば大きくて数千万規模くらい。
案件規模が小さい以上、一つのプロジェクトに大人数を割くことが出来ず、小規模人数でのプロジェクトになる。システムの規模がそこそこあるのに小規模人数で行わなければいけない場合、どういうことが起きるかというと、一人当たりの担当技術の幅が広がるわけだ。大規模案件ではサーバ系、ネットワーク系、バックアップ/ストレージ系、アプリケーション系、セキュリティ系と、技術の種類によって担当チームを分けることが出来る。しかし小規模案件では、一人で設計から構築・保守まで、サーバもネットワークもバックアップ/ストレージもセキュリティも、場合によってはアプリケーションまで面倒を見る必要が出てくる。
そうなると一つの技術を深く追求することが出来ず、結果地方では「広く浅く」の技術者が多くなる。また「広く浅く」の技術者が集まってシステムを構築する以上、新しい技術や珍しい技術にチャレンジするだけの時間も金も余裕も無い。一つの案件で試せる新技術は一つか二つ、他は過去に経験したシステムからの流用で済ます。そうすると技術の最先端を望むような技術者にとっては「楽しくない」と感じてしまうことになる。新しい技術、大規模案件でしか適用できないような技術にチャレンジしたのであれば、中央で仕事をするほうが機会は多くなる。


つまり、中央に出るべき人材は
  • 大規模な仕事をしたい人
  • 新しい技術or高額な機械を使うような仕事をしたい人
である。
ちなみに僕は中央で仕事をすることを自社で推奨しているし、出来れば東京での案件を受注しようとしている。それは何故かというと、(1)新しい技術を使って仕事をする機会が得られること、(2)地方では触れないような高額な機械を使った設計構築が出来ること、(3)地方と中央でのビジネススピードの差を感じることが出来ることだ。もちろん永住して欲しいとは思っておらず、2,3年短期で東京での仕事を経験し、その経験を地方に帰ってきてから活かして欲しい、という事なんだけど。


では、技術者の中央集中を防ぎ、地方に技術者を留める為にはどうしたら良いのか?逆に考えていけば
  1. 地方でも新しい技術or高額な機械を使えるような仕事があれば良い
  2. その為には、地方で大規模な仕事があれば良い
のだが、もちろんそう簡単にはいかない。前述したとおり、まず現在は人件費がどんどんカットされ、雇用自体が減っている状態なのだ。まずは地方に技術者が留まれるだけの雇用を用意する事、その中で大手ベンダに依存しない業務(例えば新しいWebサービスだったり、新しいパッケージだったり)が生まれること、そしてその業務に憧れた技術者がまた地方に留まっていくこと。そんなグッドスパイラルが構築されないと、地方の技術者を取り巻く環境はどんどん疲弊していくだけなんじゃないだろうか。


以上が僕が認識している現実。以下は僕の思い。上記の通り、まずは地方で雇用を確保し、技術者が留まる土壌を作ることが、今の僕のミッションだと思っている。正直なところ僕は自分の技術者としてのクリエイティビティは諦めていて、僕が新しい何かを生み出すことは出来ないと思っているけれど、その新しい何かを生み出すことが出来る技術者を、北海道で育てることこそが、僕のやるべきことなんじゃないかと思ってる。僕が今までやってきた通り、中央にある案件を(技術的に面白みが無いとしても)地方に移し、地方で雇用を確保する。これがまず第一歩だと思うのだ。僕は北海道という土地で、技術者の為に土地を耕し、種を植えたい。いつか大きな花が生まれ、北海道を技術者の楽園にして欲しい。そう願ってる。

さて、この辺の話には@snoozer05さんとか@bokusamaさんが色々想いを抱えてるんじゃないかなーと思っているので(無茶振り)いつかお互いにアプトプットし合いたいなと思う。