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ネガティブなフィードバックをする時に意識したい7つのこと

僕は現在は取締役兼事業本部長という立ち位置でお仕事させて頂いてますが、元々はエンジニアで、かつピープルマネージメントを15年以上しておりました。僕がマネジメントしたメンバーは合算すると200人以上になります。正直に言えば、楽しいことはたくさんあったけれど、もちろん辛いことも多々経験していまして、特にメンバーに対してネガティブなフィードバックをすることは大きな苦しみの一つです。

最近、自分の部署の若いマネージャーから、ネガティブなフィードバックを上手に行うことが難しく課題に感じている、という声があったので、僕の経験をまとめてみました。

ポジティブなフィードバックをセットにして伝える

どんな人にとっても、悪い話を聞くことは楽しい経験ではありません。悪い話だけを聞き続けると、不愉快な感情が理性を覆い隠してしまいます。しかしフィードバックとは叱ることではなく、どのように改善していくかを議論するためのきっかけであり、感情的になることはマイナスに働きます。ネガティブなフィードバックを伝える時は、ポジティブなフィードバックをセットに、出来れば先に伝えます。良い点がない人はいません(そんな人は採用していないはずです)から、必ず褒めるポイント、褒めるべきアウトプットがあるはずです。ポジティブなフィードバックをセットすることで、相手の感情のバランスを取ることが出来ます。

ネガティブな内容を責めるのではなく事実として伝える

上述の通り、フィードバックの目的は叱責ではなく改善なので、「なんで出来ないんだ」とか「どうして出来なかったんだ」ではなく、事実としてのネガティブな現状を正確に伝えることが重要です。例えそれが叱責に値する内容であったとしても、どちらか一方が感情的になると必ずもう片方も感情的になるので、冷静に正しく事実のみを伝えます。

期待値を提示する

ネガティブなフィードバックには、必ずあるべき姿、こちらが期待していた姿があるはずなので、それを伝えます。その際には一方的に伝えるのではなく、こちらの期待値を根拠と併せて伝え、その上で一緒にその期待値の妥当性を議論します。この期待値のすり合わせをしないと、メンバー本人の振り返りも生まれず、改善のためのアクションも「言われたからやる」だけになってしまいます。

なぜネガティブな結果になったのかをヒアリングする

人それぞれ様々な事情や環境があるため、どうしても良い結果が出せない場合もあります。何故ネガティブな結果になったのかをヒアリングし、事情や環境に由来するもので、かつ改善可能なものであればそのためのアクションを議論します。事情や環境に由来せず、完全に個人に起因するものであれば、マネージャーがそれをネガティブに捉えていることをメンバーも納得しやすくなります。

期待値を越えるために取るべきアクションを議論する

期待値のすり合わせが出来たのであれば、次にその期待値を越えるために取るべきアクションを議論します。これもマネージャーから一方的にアクションを指示をするのではなく、メンバーからの提案も引き出し、お互いに納得できる実現可能なものに落とし込みます。そして重要なのは必ず期限を設定することです。アクションを決めるだけで実施されないと意味がないので、そのアクションが短期的なものか長期的なものか、ワンショットで実施するものなのか継続的に実施するものなのかを整理し、いつまでにどの程度の周期でやるのかを議論して決めます。

期待値を越えた時に起こる結果を提示する

メンバーとマネージャーという関係性には必ず評価が伴いますし、企業における評価とは給与に直結します。多くの場合、期待値を越えた場合には昇給無いし賞与支給が行われます(行われるべきです)。その期待値を越えた時にどのような結果がメンバー本人に起こるのかをきちんと提示することで、期待値を越えるモチベーションが生まれます。

相手のキャラクターによって対応を変える

一番最後に一番ふわっとした話で申し訳ないんですけど、正直に言えばこれが一番難しく、そして重要です。性格というのは人それぞれで、ネガティブなフィードバックを笑いながら受け止められる人、悲しむ人、激怒する人、淡々と受け止める人、多種多様な人がいます。そしてメンバー本人の性格だけでなく、マネージャーとの関係性によっても、フィードバックの進め方は変わります。このため、日頃からメンバーの感情の機微や行動を良く観察し、会話しながらも相手の口調やトーンや表情を良く観察し、千差万別に対応する必要があります。

こういった対応を、多人数を相手にするのは困難です。そこで僕は一人のマネージャーがピープルマネジメントする範囲を6人〜8人と定めています。一人の人間が手厚いコミュニケーションを取れる人数はそのくらいが限界だと(僕の体験から)考えています。正直なところ、僕自身この手法は本などで学んだのではなく、経験で学んできたので、どうやったら最速でこの方法を学べるのかは上手く説明できません。


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アンドリュー・S・グローブ(著), 小林 薫(翻訳)
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