カオスを楽しむ
転職して4ヶ月が経ちましたが、おかげさまで楽しく仕事させて頂いています。未経験の業界、未経験の職種、未経験の会社規模なので、何もかも新鮮なのですが、この楽しさの根本は「カオス」であることだと思います。
もちろん歴史のある大きな会社なのでしっかりとした組織や制度があります。しかし歴史のある大きな会社だからこそ、手の届いていないところや届かなくなったところがあったり、非効率なまま残っている仕事があったり、複雑な人間関係があったりします。そういったポイントを改善し、更に事業を成長させるために、僕のような人間を採用して頂いたのだと考えています。
振り返ってみれば、僕は常にこの「カオス」を求めて仕事を変え続けてきました。
最初に入った会社では、VBでシステム開発をする部署でプログラマとして働いていたものの、Linuxを軸とした新規事業の部署が立ち上がるタイミングで希望を出して異動しました。会社として全く新しい分野でのチャレンジだったので仕事もルールもないような状況でしたが、先輩たちと一緒に営業活動から技術調査・設計・構築、運用まで全部自分たちでやって実績を積み上げていくのはとても良い経験でした。
その新規事業部署の人たちとスピンアウトして立ち上げたのが次の会社で、そこでも自分たちで仕事を取りに行って、案件をこなして売上を上げて、会社として必要なルールを作って、採用もして、ピープルマネジメントもして....会社として必要なありとあらゆることを自分でやってました。最初から最後までカオスしかなくて、人が増えれば増えるほど問題も増えて、それを片っ端から片付けて、めちゃくちゃ忙しかったし辛いこともあったけど、でも楽しかったです。この会社で得た経験がその後の僕の大きな礎となってくれました。
次の会社も、50人規模の頃に入社して、10年後に退職するときには700人近くまで大きくなったので、その間にたくさんの課題があり、それに対するアクションをし続けてきました。色んな経験をさせてもらったことも感謝しています。
そして今、僕は眼の前に広がる広大なカオスの原野をニヤニヤしながら眺めています。
人には様々なタイプがいます。ある特定の業務を心惑わされることなく安定してやり続けたい人もいるし、人間関係なんて面倒だから極力他人とコミュニケーションを取りたくないって人もいます。ひたすらに最新技術を追い求めたいエンジニアも、コードを書き続けたいエンジニアもいます。もちろん仕事なんて極力したくないって人もいるでしょう。それぞれに良し悪しはありません。単にその人の選択です。
僕は、落ち着いた状態で一つの仕事をするのが向かないんだと思います。飽きちゃう。不安定な状況=カオスの中で、その不安定さの原因となっている課題を探索し、発見し、分析し、解決し、安定した状況に近づけていく。その繰り返しにこそやり甲斐を感じる。
なぜカオスにやり甲斐を感じるのかと言うと、いくつかのポイントがあります。
一つは「無知を知る」ことができること。
カオスな状況を最初から全て見通せることはなく、そこには自分が知らないことがたくさんあります。業界知識、業務知識、地域の文化、会社の歴史、僕の知らない経験をしてきた人、その人の過去や人生感。どのようなことでも自分にとって新たな学びがあり、知識になり、経験になります。
自分の知っている範囲、自分のできること、それだけで仕事をするのは、楽だけど刺激がないと感じます。僕の好きな言葉の一つが「どんな髭剃りにも哲学がある」であるくらい、僕は新しい知見を得るのが好きなので、常に自分の無知を認識し、その無知と既知に変えていくのが、とても楽しいです。
もう一つは「課題を解決」できること。言い換えれば「より良くした」という実感を得られることです。
僕はこの課題解決がすごく好きで、課題を見るとワクワクします。IT業界ではよく炎上という言葉が使われますが、炎上プロジェクトにアサインされるとやる気がモリモリ湧いてくるタイプです。身に覚えがある方も多いのではないでしょうか。眼の前に課題があって、それを解決して、より良い環境を作り上げること。僕の一番大きな仕事へのモチベーションがこれです。そしてカオスであるとは課題がたくさんあることです。そりゃ楽しいに決まってる。
そして「誰かの助けになること」も僕にとって重要です。
カオス=課題がたくさんあるのだから、それが原因で困ったり、辛かったり、面倒臭かったりする人がいます。その状態を是正すると、その人に喜んでもらえます。「ありがとう、助かりました」って言われて嫌な気持ちになる人はいませんよね。僕はたくさん言われたいので、たくさんの人の助けになりたいです。
25年間IT業界で働いていて、前職では最先端のクラウド技術を使った事業に関わっていたんですが、実は僕は技術自体にはそんなに興味がないんだな、と最近自覚しました。クラウドも、IoTも、機械学習も、生成AIも、それ自体にワクワクすることがありません。その技術でどんな課題が解決できるのか、誰を助けることが出来るのか。それが僕にとっては重要なのでした。だからこそ、今IT業界から離れてみて、技術を技術自体ではなく課題解決のための手段として捉えることで、これまで経験したことのないやり甲斐を感じているのだろうと思います。
もちろん折角地場の企業に転職したのだから、会社の課題だけでなく、地場の課題を解決出来るともっと楽しくなると思います。
さて、僕はこれから、どれだけ多くのカオスと戦うのでしょうか。楽しみだなー!
モーム(著), 行方 昭夫(編集), 行方 昭夫(翻訳)