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フィードバックも告発も、実名のほうが効果が高い

前提として、本話題は会社組織におけるものとする。なのでフィードバックとは「会社組織において、会社組織に所属するメンバーが組織の目標達成のために行った行動に対し、より改善していくための指摘や指導を、そのメンバーの上司/同僚/部下が行うこと」を指し、告発とは「会社組織内にある不正やハラスメントに対し、会社組織に所属するメンバーが会社または外部に対し伝達し、是正や処罰を求めること」を指す。

そしてフィードバックも告発も、実名において行うものと匿名において行うものがある。しかし、フィードバックも告発も、実名で行うほうが効果が高い。

まず告発について。告発における匿名の制約事項は以下のようなものがある。

  • そもそも事実確認が出来ない。
  • 内容の背景や個別事象や事情について深追いが出来ない。
  • 具体的な情報を得てしまうと匿名性が損なわれてしまう。
  • 情報量が少ない中で会社が行える対応は一般的なものに限定される。
しかし告発の場合は、情報発信者が不利益を受けないように匿名を希望する場合が多い。この場合、告発の通報を受けた側に匿名性を担保する責任がある。つまり情報発信者は告発先には実名で連絡し、その通報を受けた会社または第三者組織が情報発信者の匿名性を担保するような制度設計が望ましい。また、匿名での通報を受け付ける制度設計でも良いが、その場合は十分な調査が出来ないことを事前に伝えておくのが良い。

次にフィードバックについて。こちらが本題。

フィードバックにおいても、告発の場合と同じ匿名の制約事項が存在する。すなわち事実確認が出来ないこと、具体的な内容について深追いが出来ないこと、具体的な情報を得てしまうと匿名性が損なわれてしまうこと、フィードバックに対する改善が一般的なものになってしまうことだ。

逆に実名でのフィードバックに対しては、具体的な内容について深追いが出来、より明確な改善アクションが検討できる。また実名のフィードバックは他責ではなく自責において行われる。つまり他人の非をただ責めるのではなく、自身の発言に責任を持って相手のためにフィードバックを行うため、より具体的な指摘や提案がしやすい。結果、実名のほうが効果が高い。実際にDeNAさんやカヤックさんは実名での360度評価を取り入れているとのこと。

そして、実は一番重要なのは、上司と部下の関係性であれ、同僚同士であれ、そもそも匿名でしかフィードバック出来ない関係性であることが問題だ、ということ。この問題に比べればフィードバック内容は些事だ。まず改善すべきはその関係性であり、その上でお互いにフィードバックしあい、改善するのが望ましい。そのフィードバックが相手のためを想ってなのであれば、尚更実名で行うほうが相手の改善に繋がる。

匿名でのフィードバック制度がダメだ、という事ではない。そのような制度設計も組織の状況においてはあり得る。しかし、本来フィードバックは相手のために行われるものであること、匿名では改善が限定的になること、実名でフィードバックし合える関係性が理想的であること、から、実名でのフィードバック制度のほうが望ましい、と僕は考える。


英治出版 (2021-02-03T00:00:01Z)
エイミー・C・エドモンドソン(著), 村瀬俊朗(その他), 野津智子(翻訳)

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