「灰と幻想のグリムガル」はファンタジー小説の新たな金字塔になるかも知れない
まず僕のスペックから。小学生の頃は灰谷健次郎が好きで、そこから純文学と古典に目覚めて、村上春樹と平行して所謂ライトノベルを経てミステリーとホラーを経由し最終的にSFに到着。20代以降はほぼハヤカワのSFオンリー。雑食の結果が偏食になったという、まぁありがちなパターンです。
そんな僕ですが、昨日(3/30(日))の台風みたいな天気に辟易して自宅に引きこもりKindleで手軽に読めそうな本を物色していたところ、以下の作品にたどり着いた。まぁ、Kindleストアで評価が高かったわけですよ。
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ジャンルとしてはライトノベルに分類されていて、僕自身はライトノベルと呼ばれるものを読むのは20年ぶりくらいになるんだけど、この本はファンタジー物としてとても面白かったです。
話は脱線するんだけどこのライトノベルって定義、そもそも統一見解が無いし、SFなんかはその物語内容や文体からライトノベルとして出版されているものと大差が無いものもあればライトノベルとして出版されている中にもハードカバーでも売れるんじゃないかってくらい重厚なものがあったり、このライトって表現自体がいまいちなんだと思うんだが、とはいえこういったアニメ調の絵を表紙や挿絵に使ったり文庫判型で低価格に抑えないと売れないとか色々事情があるんだろうね。どのような形態であれそれが良作なのであれば広く世に知られて欲しいと思う訳で、だからこそわざわざこんなブログ記事を書いているわけなんだけど。
話は戻って感想なんですが、この作品は、分けも分からぬまま突如として「まるでゲームのような」ファンタジー世界に放り込まれてしまった主人公たちの物語です。このプロット自体はまぁ、使い古されたものではありますよね。僕も中学生の頃にはロードス島戦記みたいなファンタジー物を読んでた時期があるし、RPGゲームも一通りやったクチなんで、自分がその世界に入ったら...みたいな妄想をしたりもするわけですよ、寝る直前とかにね。でもその中での自分は当然勇者で、いきなりLv99で、雑魚は当然ボスキャラだって一撃必殺なんです。綺麗なおねーちゃんにキャーキャー言われたりしてね。魔王だって3ターン勝利ですよ。そんでまた王国に戻って綺麗なおねーちゃんにキャーキャー言われるわけです。中学生の妄想なんてその程度です。
でも本作では、環境の変化に戸惑い、恐れ、一つ一つ努力を繰り返しながら、地道にその世界の中で生きていく姿が描かれています。ファンタジーのザコキャラとしては何より有名なゴブリンだって、それを倒すまでに何度も怪我をして死にかけて、それでもコツコツと努力と工夫を繰り返して、そして戦っていく。中学生の妄想じゃない、ファンタジーの夢見物語じゃない主人公たちの姿がそこにあります。
こう説明しちゃうとすっげーストーリーが遅々として進まなそうですが、その辺は作者さんのうまいところで、人間関係や環境の変化などをうまく組み込んで、飽きずに一気に読み進むことが出来ました。
ファンタジーというジャンル自体、既に金字塔があちこちに建てられてしまい、もう廃れる一方なんじゃないかと思っていたけれど、まだまだやり方によっては面白い物語が生まれるもんなんだなぁと思いました。まだ一巻しか読んで無いのですが、続巻もちまちま読んでみようと思います。
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