読了:山本弘:[アイの物語]

「まだ見ぬ冬の悲しみも」と同様に、短編を連作仕立てにして刊行されたものなんだけど、これが見事に当たってる。一冊の単行本にしたときにこれだけ主題を崩さずまるで最初から一つのテーマによって語られたかのように構成されており、これほとんど奇跡のレベルなんじゃないのか。

『神は沈黙せず』の著者がつむぐ“機械とヒトの千夜一夜物語”。数百年後の未来、機械に支配された地上で出会ったひとりの青年と美しきアンドロイド。機械を憎む青年にアンドロイドが囁く、「物語から、この美しい世界は生まれたのよ」と。彼女が語り始めた、世界の本当の姿とは?
アイビスの語る一つ一つの物語自体が非常に引き込まれるものなのだけれど、最後の「アイの物語」によって、ヒトの醜さ・愚かさ・矛盾を踏まえて、ヒトの良さを肯定している、作者による「人間賛歌」でさえあるのでは無いかと思った。SFではあるしSF用語も多々出てくるのだけれど、ハードSF的な用語の難易さはあまり気にせずとも読めるので、SFファン以外にも広くオススメできると僕は思う。

一応連作ではあるので好きなものを一つ選ぼう...と思ったんだけど、全部面白かったので選べなかった。ロジックで言えば「宇宙をぼくの手の上に」と「正義が正義である世界」かなぁ。山本弘作品は本作に限らず読みやすく美しい物語が多いのだけど、本作は特に広く多くのヒトに読んで欲しいなぁ。


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