2009/05/08

読了:飛浩隆:[グラン・ヴァカンス][ラギッド・ガール]

「グラン・ヴァカンス」は長編で、「ラギッド・ガール」は長編を補完する中編集。3部作のうち1,2部にあたります。

「グラン・ヴァカンス」は繊細で美しく、悲しくグロテスク。仮想世界のリゾートというプロットは確かに今では珍しいものではないかも知れませんが、現実世界と断絶されているということ、また謎の敵に世界を侵蝕されていくというストーリーは、最初から最後まで飽きることなくグイグイ引っ張られていきます。あちこちに複線が張られており、最終章に向かって徐々に複線が解かれていく流れ、「あぁそういうことだったのか!」という驚きが最後までずっと続いていきます。こんなに面白いSFは近年読んだことがありませんでした。

「ラギッド・ガール」では仮想世界誕生秘話から現実世界との断絶原因、そして謎の敵の誕生についてと、「グラン・ヴァカンス」で語られなかった謎が5つの中篇になっています。ここでも複線が解かれる快感、驚きが満ちています。現実世界を舞台にした物語が含まれているため、グラン・ヴァカンスにあった幻想的繊細さでは無く、リアルな空気感、タイトルの通りラギッドな読後感があります。

両作品とも、登場人物が虐殺され陵辱されるシーンは、執拗なまでにグロいのですが、それでも読み進められたのは内心登場人物が人間では無い=AIという仮想的な存在という意識が頭にあったからかも知れません。不思議なもんですね。

第3部がいつ刊行されるのかわかりませんが、残っている謎(天使とか、ジュールのその後とか)が明らかになるのか、楽しみでたまりません。待ち遠しいです。